2012年5月18日金曜日

個人情報漏洩事件の動機

証券大手の三菱UFJ証券は8日、システム部部長代理の男性社員(44)がほぼ全顧客にあたる約150万人分の個人情報を不正に持ち出し、うち約5万人分を名簿業者3社に計32万8千円で売っていたと発表した。投資の勧誘などから不審に思った顧客の通報で、情報流出が判明した。同日付で社員を懲戒解雇処分とし、近く警視庁に刑事告訴するという。

3月中旬から今月7日までに、不動産業者や商品先物取引業者からの勧誘を受けた顧客から146件の問い合わせが、三菱UFJ証券にあった。緊急調査したところ、4月1日深夜から2日にかけ、この社員が情報を持ち出し、名簿業者に売ったことを打ち明けたという。

同証券によると、社員が売った名簿業者3社から不動産、商品先物など13業者に情報が転売されていた。名簿3社からは情報の利用・販売中止の同意を取り付け、転売先13業者のうち11業者からの協力も受けているという。大手金融機関から流出した情報が実際に勧誘などに転用されたのは極めて異例。また、顧客から問い合わせがあった勧誘業者には、13業者以外の名前が10社ほど含まれており、転売先が広がっている恐れもある。

同証券の発表によると、社員は2月4日、現住所がわかる取引中の全口座148万6651人分の個人情報を持ち出した。名前、住所、自宅や携帯の電話番号、年齢、勤務先のほか、年収を「300万~500万円」「500万~1千万円」など7段階に区分した情報も含まれていた。

社員は、社内で8人に限定されている情報システムへのアクセス権を持っていた。1月26日、同僚にわからないよう暗号をかけて顧客情報をサーバーに記録。そのうえで、毎月コピーをしている業務用データの「追加分」として、別の社員に指示して保管用CDにコピーさせ、それを持ち出した。追加コピーをした記録が日誌に残っていた。

昨年10月3日から今年1月23日の間に新規の取引口座や、預かり資産を一任運用する「投信ラップ口座」を開いた顧客4万9159人分。社員は2月15日以降、数回に分け、自宅のパソコンからメールで名簿業者に売っていたという。

同証券の調査に、社員は消費者金融への借金返済が動機だったと説明。同証券は情報管理体制を見直し、責任者を処分する考えだ。金融庁も同証券に報告を求め、重大な問題があれば、業務改善命令などを出す方針だ。

2012年5月7日月曜日

裁判員裁判で初めての性犯罪

全国3件目の裁判員裁判の裁判員選任手続きが1日、青森地裁(小川賢司裁判長)で行われ、裁判員6人と補充裁判員3人が決まった。

裁判員裁判で初めての性犯罪が対象となるため、手続きでは強盗強姦(ごうかん)の被害者の女性2人について、事件当時の居住地域と年齢を示し、裁判員候補者にその地域での居住歴を尋ねるなど、被害者のプライバシー保護や負担軽減への配慮がされた。

審理されるのは、田嶋靖広被告(22)が、青森県十和田市に住む女性2人に対する強盗強姦などの罪で起訴された事件。

手続きには、参加予定の裁判員候補者39人のうち34人が出席した。出席率は87・2%。地裁は出席した34人のうち、重い病気や重要な仕事などを理由に5人の辞退を認めたうえで、検察官、弁護士も加わった面談と抽選で裁判員らを選んだ。

地裁によると、手続きでは地裁職員が事件内容を記載した書面を配布。被害者の女性2人について、事件当時の居住地域と年齢が示された。書面の裏は、被告や被害者の友人などにあたらないかどうかを候補者に回答してもらう「当日用質問票」。今回は、地検の要望を受けて「十和田市に住んでいたり、働いているなどの事情がありますか」などの項目が盛り込まれた。

また、地裁職員は被害者を特定する事項を口外しないことや、メモを取らないことを求め、配布した書面は回収した。

被害者の知人や居住地の近い人などを裁判員に選ばない「理由を示さない不選任請求」をする方針だったが、地検はこの手続きを取ったかどうかを明らかにしなかった。

裁判員に選ばれなかった十和田市の会社員松田満さん(53)は選任手続き後に記者会見に応じ、「なぜ十和田市で起きた事件に呼ばれたのか」と疑問を呈し、「(こうした事件では)被害者と同じ地域に住む人は、最初から候補者にしない方がいいと思う」と話した。