2016年4月19日火曜日

「創造階級」のライフスタイル

実際、若者たちの消費生活には、ゆるやかな異変が生じつつある。顕示的な消費生活のなかで「自分探し」をする若者は、「漠然とした不安」を抱えて生きているのであって、どんなに気に入った商品によって自分を演出しても、「別の商品のほうがよかったかもしれない」という「偶有性の不安」から逃れることはできない。消費社会のなかで「本当の自分」を探し求める若者は、しかしやがて、三つの行動パタンに分岐していくであろう。

第一のパタンは、より多くの商品を買い揃えることによって、消費財による自己表現を増大させる方向である。しかしこの方法は、かえって徒労に終わるのみで、ますます「本当の自分がみつからない」という不安を抱えてしまう。第二のパタンは、「本当の自分探し」をするよりも、高級ブランド商品を買うことで、一時の流行によってすたることのない価値を身につける方向である。ところが三浦展の分析では、最近では下流社会の人々のほうが、ブランドにこだわっているという。これに対して第三のパタンは、「自己開発志向」の消費である。

たとえば、エステや整形、フィットネスやヨーガによって、外見を改造する。海外ボランティア・ツアーやインターネット・コミュニケーションのオフ会などで、他者と交流する。あるいは、ほとんど消費せずに、ブログによる情報発信によって自己の内面世界を深めていく。こうした自己開発志向の生活は、まさに「創造階級」のライフスタイルといえるだろう。創造階級は、お金よりも自由な時間を大切にする。お金があれば、「ブランド男/ブランド女」になることができるだろう。しかし膨大な時間がなければ、「創造階級」のライフスタイルを身につけることができない。