2016年1月21日木曜日

フェミニズムは政治運動である

ここでは「私たちは女性のためだけの社会政治経済プログラムを提案することはできない。私たちに必要なのは女性の視点からの社会のあり方の方向なのだ」という。そして「第三世界の女性の主要な問題が成長と開発のプロセスに不十分にしか参加していないことで、女性が参加して資源や土地や雇用や所得などをもっと得さえすれば女性の経済的社会的地位が劇的に変化する、と考えられて来たが、私たちの経験からこの考え方に挑戦しなければならない」と、政府など破壊的な開発を進めてきた側からの参加への誘いをまず疑ってかかる。「女性のエンパワーメントこそ最重要である」とする。

その力をつけるにあたって、フェミニズムを第三世界の女性としてどうとらえるか。「フェミニズムは性差別と家父長制に反対するという共通の基盤に立ちながらも、女性の必要や関心によって多様である」とし、「女性解放の闘いは他の社会変革の闘いと連携しなければならない、と同時に性的従属との闘いが階級闘争や民族解放の中に飲み込まれてしまってはならない」と、政治経済構造の変革とわかちがたく結びついた第三世界の女性たちにとってのフェミニズムを唱える。「フェミニズムは政治運動である」というのだ。第一世界のフェミニストたちが性的従属との闘いだけに傾きがちなのに対しても、第三世界の伝統的な左翼運動家たちがフェミニズムを運動の分裂をはかるかのように否定的に見るのに対しても批判する。

こうした基本的姿勢から、貧困と性的従属の両方を変えるビジョン、「人間の基本的必要が充たされ、あらゆる暴力から解放され、女性のもついたおりや連帯の価値が人間関係を特徴づけるような世界」を求める。そのための戦略は、女性が草の根レベルで大いに議論すべきだと呼びかける。「まず開発の方向を、貧しい女性たちの労働を中心に据えるように根本的に変えなければならない」。それには、輸出志向型の農業、工業政策を改める、世界中で軍事費と資源利用を減らす、多国籍企業を規制する、などの長期戦略を示す。

このような戦略の実行には女性組織が重要で、まず女性の力をつける方法を点検しなければならない。伝統的福祉中心、政党系列、労組、海外援助受け入れ型、草の根グループ、リサーチなど違ったタイプの女性団体があるが、様々な弱点や問題点をかかえている。それを克服するために、「一つは組織の民主化と会員基盤の拡大に努力し、もう一つは、個人の権力拡大を拒否する倫理を実践することが必要だ」とする。