2015年9月18日金曜日

日本列島の自然環境

都市の生活空間に影響を与える自然環境について考える場合も、いちおう当てぱめることができよう。事実、都市生態学という分野では、そうした手法にもとづく研究が積み重ねられている。つまり、自然生態系を考察するさいの、方法上のアナロジーによって。都市生態系”を科学的に把握しようとするものであり、生態学の応用分野として位置づけられている。

しかし、都市生態系が自然生態系と多くの点で共通性をもちながらも、やはり基本的に異なっているのは、環境に対する人間(都市生活者)の主体的な働きかけが重要な要因をなしているという事実であろう。要するに、都市に影響を及ぼす自然環境についても、さまざまな人工物や人間の諸活動にともなうリアクションとともに、都市空間独特の自然的環境が醸成されるようになっていくのである。ここから、都市のアメニティをめぐる問題が、特別の色彩をもって浮かび上がることにもなるわけである。

ところで、都市の自然環境について述べるまえに、日本全体の自然にかんする特徴をざっと見ておこう。日本の自然環境には、いくつかの際立った特色があることが知られている。第一に、日本列島は気候分布上、温帯に属しながら気温の年格差が大きく、冬はより寒く、夏はより暑い。しかも、季節風に位置する日本列島は、冬季にはシベリアからの冷たい気流が流れ込み、夏季には南方洋上から湿った暖かい気流が押し寄せるため、寒暖の差がいっそう大きくなる傾向を見せる。

そのため、植物相も、北方寒地系と南方暖地系の植物が入り混じり、独特の群落と景観をかたちづくっている。第二に、降水量が非常に多い。日本の降水量は年平均一七〇〇ミリだが、これは世界の年平均降水量七五〇~一〇〇〇ミリのほぼ二倍に相当する。とはいうものの、その降水量は地域によって相当の開きがあり、北海道の一部や信州、瀬戸内沿岸部などは、年間降水量がー○○ミリにも満たない。ところが、琉球列島-九州-四国-紀伊半島-東海地方などの太平洋沿岸部と、逆に北陸-東北にいたる日本海沿岸部では、二四〇〇ミリを超える降水地域が広がっているという具合である。