2015年8月25日火曜日

アメリカ企業の活況

それによると、第一は、八〇年代に行ったコンピューターと情報技術への巨大投資が実を結んだこと(一人当たりで世界平均の八倍)、第二に、金融の多様化とブームである。後者は規制撤廃によって、高収益性を挙げるような好パフォーマンスの新金融商品が続々と登場することによって、中産階層の貯蓄投資先の選択肢を広げた。これら二つの要因に加えて、「透明な企業情報」の存在をザ″カーマンは強調する。かれがアメリカの金融システムをきわめ工局く評価するのは、そのディスクロージャーの故である。さしずめ、キーワードは情報と金融であり、その二つのファクターを結びつけているのが透明性ということになる。

九〇年代、アメリカの株価が上昇し続けたのは、アメリカ企業、とりわけ情報通信産業や金融機関、あるいは自動車産業も消費者小売りも、さらにはミューチュアルーファンドやへでジファンドも、増収増益を謳歌する企業群が産業分野の違いをこえて出現したからである。そこで、世界企業番付からアメリカ企業の位置を確認しておきたい。代表的な企業番付である『フォーチュン』(98年8月3日)恒例の「世界大企業番付」では、九七年の売上高番付で、五〇〇社中アメリカ企業は一七五社を占めてトップで、二一社の日本企業を引き離している(ドイツ四二社、フランス三九社)。上位一〇社(売上局)では、五社が日本企業であり、米企業の四社より多いが、上位一〇傑に入る日本企業のすべてが総合商社(三位三井物産、四位三菱商事、六位伊藤忠、九位丸紅、一〇位住友商事)である。

ちなみに、この統計では、金融業も同列に分類されているが、銀行業の「売上高」とは金利収入と非金利収入(経費を差し引く前)を合計したものである。ただし、何を尺度として測るかによって企業番付は大きく異なる。利益額で見てみよう。上位はアメリカ企業の圧倒的独占である。上位八社は三位のロイヤルーダッチーシェルを除くと、すべてアメリカ企業で、一位エクソン、二位GE、四位インテル、五位フォードーモーター、六位GM、七位フィリップモリス、八位IBMとお馴染みの名前が続く。日本企業トップは、二一位トヨタ、五六位NTT、六〇位ホンダ、六二位日本生命、九五位第一生命。上位一〇〇社に入るのはこのわずか五社にすぎない(次は東京電力一四二位、明治生命一五二位)。

さらに、収益性では格差はもっと広がる。純益ノ収入比では、一位マイクロソフト、三位インテル、、純益/資産比では、二位インテル、三位マイクロソフト、四位デルーコンピューターと続く。ところが、収益性で上位五〇傑に日本企業は入っていない。収益性の上位に、コンピューター・ソフト会社が多いのは時代的特徴を反映したものだろう。興味深いのは、インテルの売上高番付が五位にすぎず、マイクロソフトに至っては四〇〇位に後退することである。ところが、純益/収入比となると、一位のマイクロソフトは三〇・四%、三位のインテルは二七・七%と高騰する。

それらと対照的なのが。日本の商社で、売上高では上位に並ぶ総合商社も、純益ではさっぱりである。いずれの総合商社も純益では二〇〇位以下に転落する(三井物産三三六位、三菱商事二八七位、伊藤忠四八四位、丸紅三八八位、住友商事三六〇位)。企業業績は売上高や純益だけではなく、当該企業が市場でどのように評価されたかが重要な指標になりつつある。そこで『ビジネスーウィーク』(98年7月13日)は、企業の株式時価総額番付を発表している。それによると、株式市場の好不調を反映して、日米の企業に大きな差が生じている(以下の株価のデータは、すべて九八年五月二九日の時点による)。