2014年10月18日土曜日

「ITによる人間疎外」

情報ビジネスの裾野を広げる、重厚長大型を含めた旧来の産業の再生を進める、外出が思うにまかせなくなった高齢者の日常生活の必要を満たす。

これらのすべてを目指して、「ヤング」より中高年、新興・ハイテク企業より既存の伝統産業にITの浸透を図ることが、情報化戦略の重要な部分を占めていなければならない。何より、モノ造り産業の国際競争力をITによって回復・強化することは、日本の雇用と活力にとって死活の意味を持つ。

世界的規模で情報化が進んでいくのと並行して、世界的規模で「情報格差」が広がっている。その落差は、熟練がものをいった製造業が産業界をリードしていた時期と比べて、情報化時代にはより深刻な、乗り越え難いものになっていく恐れもある。

「ITによる人間疎外」を生まないための「中高年向けパソコン・インターネット講座」などにも、国と地方自治体が力を入れるべきだろう。情報化教育は、幼稚園にまでさかのぼって考えられねばなるまい。自閉的になりがちなコンピューターゲームにのみ閉じこもることのないように、またゲーム機の家庭への浸透以前から進んでいる活字離れ、読解力不足に対処することも、ITを人間形成に関わるものとして活用するうえで、不可欠のことだろう。

これに関連することとしていえば、日本語の最大の長所である漢字・仮名書き文を、高度化したITで使いやすいものにしていく必要もある。IT革命は、書籍やパソコンなどの情報機器の商取引ではすでに身近なものとなっている。間もなく金融、証券取引へ、さらに米国の先例からすれば、税務申告、そして選挙の投票などにも及んでいくだろう。

重要なのはこうした「表」の技術を、側面、裏面で支えるさまざまなシステムである。多くの部分でとりあえず米国に追随せざるを得ないとしても、情報化の負の要素に対する目配りも含めて、これこそ米国にならって総合戦略を立てねばならない。

コンピュータ誤作動の「二〇〇〇年問題」のように、米国流のデータ仕様にならったことで世界中が巨額の無駄遣いをしたという悪例もある。こうした事態への対応も含めて、総合戦略は不可欠である。